北朝鮮産マツタケ不正輸入朝鮮総連トップ宅捜索事件

北朝鮮産マツタケ不正輸入朝鮮総連トップ宅捜索

日本が科している経済制裁の一環で輸入が全面禁止されている北朝鮮から、中国産と偽ってマツタケを輸入した疑いが強まったとして、京都府警、神奈川県警などの合同捜査本部は2015年3月26日、外為法違反の疑いで、関係先として朝鮮総連の許宗萬議長の自宅などに家宅捜索に入った。朝鮮総連トップの自宅に捜索が入るのは極めて異例。

捜査本部は同容疑で、東京都内の食品会社の李東徹容疑者(61)=千葉県市川市=と金芳彦容疑者(42)=東京都江東区=を逮捕した。

捜査関係者によると、社員らは2010年(平成22年)9月、中国産と偽って北朝鮮からマツタケ約1200キロを不正に輸入した疑いが持たれている。

捜査本部は2014年(平成26年)5月、同容疑で関係先十数カ所を家宅捜索。押収した証拠品を精査し、捜査を進めていた。

北朝鮮からの輸入は2006年(平成18年)以降、全面禁止されている。


朝鮮総連トップ許宗萬とは

外為法違反容疑事件の関連先として、京都府警などの捜索を受けた在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬議長は、北朝鮮の国会議員に当たる「代議員」の資格を持つ有力者だ。

朝鮮総連は、在日朝鮮人の権利を守る目的で昭和30年に結成。北朝鮮の指導理念「主体思想」を指針に活動し、商工業者、女性、青年らの傘下団体のほか、各都道府県に地方本部がある。

許氏は総連の結成に関わり、神奈川県本部委員長や中央本部国際局部長などを歴任。責任副議長を20年近く務めた後、2012年(平成24年)5月に第3代議長に就任した。

拉致や核・ミサイル問題で日本政府が独自に科した制裁の一部が2014年7月、拉致被害者ら日本人の安否に関する北朝鮮の特別調査委員会設置の見返りに解除され、訪朝した総連幹部の再入国が可能に。許氏は同9月、最高人民会議(国会に相当)に出席するため約8年ぶりに平壌を訪れた。

滞在中に金正恩第1書記との面会は実現せず、重要拠点である総連中央本部(東京都千代田区)の競売問題をめぐり「うまく処理できず、本国から軽視されたのではないか」との不満が在日社会から漏れた。


「捜査は暴挙。日朝関係悪化なら日本の責任」

北朝鮮からマツタケを不正輸入したとして外為法違反容疑で東京都内の貿易会社社長らが逮捕された事件。京都府警や神奈川県警などの合同捜査本部は26日、関係先として在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬(ホ・ジョンマン)議長の自宅の家宅捜索に乗り出した。閑静な住宅街は早朝から物々しい雰囲気に包まれた。

同日午前7時10分ごろ、東京都杉並区にある許氏の自宅前に灰色の捜査車両が横付けされ、捜査員ら数人が室内に入った。路上でも別の捜査員が押収物を入れる段ボールを路上に置き、待機した。

一方、許氏側の弁護士を名乗る男性2人が間もなく到着。それに合わせるように、約10人の捜査員が段ボールを手に、足早に室内へ向かっていった。

許氏の自宅周辺の道路は警察によって規制され、住民や、事態を知って駆けつけた関係者とみられる人が見守る中で、捜索が続けられていた。

一方、社長が逮捕された東京都台東区の貿易会社でも同日朝から捜索が行われた。事務所が入居するビルの出入り口は内側からシャッターが下ろされ、中の様子はうかがえないが、周辺には報道陣が詰めかけ一時、騒然となった。

東京都杉並区内の自宅を家宅捜索された許氏は、捜索終了後に自宅前で報道陣の取材に応じ、「無法で差別的な捜査は許されない。徹底的に戦う」と強調した。

許氏は摘発された会社について「全く知らない」と説明。今回の捜査を批判した上で、「朝日関係が微妙な時に、こうした暴挙を行って関係が悪化したとしても日本政府の責任である」と語気を強めた。


容疑の2人再逮捕

中国産と偽ったマツタケが北朝鮮から不正輸入されていた事件で、京都、神奈川、島根、山口の4府県警合同捜査本部は2015年4月16日、外為法違反の疑いで、いずれも韓国籍で東京都台東区の貿易会社「東方」社長、李東徹容疑者(61)と同社社員の金芳彦容疑者(42)を再逮捕した。李容疑者は「事実に反する。北朝鮮産ではなく中国の吉林産だ」、金容疑者は「やっていません」と、ともに容疑を否認している。再逮捕容疑は平成22年9月27日、北朝鮮産のマツタケ約1800キロ(輸入申告価格約450万円)を、中国・上海などを経由し、中国産と偽って不正に輸入したとしている。

捜査本部は3月26日、別のマツタケの不正輸入にかかる同容疑で2人を逮捕。関係先として在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬[ホ・ジョンマン]議長や南昇祐[ナム・スンウ]副議長の自宅などを家宅捜索していた。


北朝鮮ウラン鉱山地域へ支援計画

北朝鮮産マツタケ不正輸入事件で2015年5月12日、逮捕された在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)トップの次男、許政道[ホ・ジョンド]容疑者の事務室から押収された金正恩[キム・ジョンウン]政権宛て報告書に、北朝鮮のウラン鉱山地域への支援計画が記されていたことが公安関係者への取材で分かった。政道容疑者が本国に重要報告を行う「密使」役だった一端を裏付けるとともに、国際社会が制裁を続ける核開発を、朝鮮総連が間接的に支援しようとしていた疑いが浮上した。

京都府警などの合同捜査本部は、外為法違反容疑による逮捕に先立つ2014年5月、政道容疑者の東京都内の自宅など十数カ所を家宅捜索していた。公安関係者によると、政道容疑者の事務室からは、朝鮮総連を指導する北朝鮮の工作機関225局のトップに宛てて作成された内部報告書も見つかった。

報告書には、逼迫(ひっぱく)した財政など組織の内実も赤裸々に記されていたが、そうした中でも「朝鮮総連中央企業運営委員会を中心に新たな機関を設立し、祖国の指導の下、祖国経済を支援していく」と誓約。平壌の鉱物加工工場などに加え、中部、平安南道(ピョンアンナムド)の順川(スンチョン)開発事業に対する支援計画が明記されていたという。

順川は、核燃料となるウランの大規模鉱山があり、北朝鮮が過去に国際原子力機関(IAEA)に核関連施設として申告した。核実験場がある寧辺(ニョンビョン)と平壌の間に位置し、北朝鮮を代表する化学工業基地でもある。

報告書では名目上、「順川の石炭工場」への支援となっているが、この地域への投資は結果的に北朝鮮による核開発を助け、核関連施設への援助を禁じた国連安全保障理事会の制裁決議など、核開発阻止に動く国際社会の流れに大きく逸脱することになる。報告書は2013年ごろに作成されたとされ、支援計画が実施されたかは不明。

政道容疑者は、北朝鮮や第三国への往来が度々確認されており、日本政府の再入国禁止措置で昨年まで訪朝できなかった父、許宗萬[ジョンマン]・朝鮮総連議長に代わって本国に組織の現状を報告し、指示を受ける「密使」役だったとみられている。

朝鮮総連内では主だった役職に就かず、貿易業者という立場を隠れみのに、本国と朝鮮総連間の資金ルートも掌握していたとされる。捜査本部は、そうした立場から、マツタケ利権をめぐる采配を委ねられていた可能性があるとみて捜査している。

参考文献




  • 最終更新:2015-05-20 19:27:55

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